望ましい旅行者層にターゲットを絞り、満足度の高いサービスを提供。その繰り返しです。

宿泊施設のマーケティング施策とは、マーケティング活動によりお客様の関心を集め、客室を販売し、収益性を伴う事業の成長を達成するための総合的な戦略です。 優れたマーケティング施策は、具体的な事業目標と合致し、支出額の高いお客様を特定し、貴施設が次の旅行のための理想的な滞在先である理由を明確に示し、ターゲット層に到達するために最適なチャネルを優先的に利用します。

マーケティング施策は、貴施設が「何」をするべきか、「なぜ」それをするべきかを明確に示します。それに伴うマーケティング計画では、利用可能な予算と人材・資材に基づいて「いつ」、「どこ」でマーケティング活動を実施するかを明らかにします。

それにより、もたらされる価値をご説明します。多くの施設のスタッフの皆様は日々、オンライン広告の購入、インスタグラムへの投稿、プロモーション作成など、様々な業務をこなされているため、事業目標を設定するための時間をとることに難しさを感じていらっしゃいます。マーケティング施策を立案・実施することにより、明確な目標に照らして時間と経費を費やすことができので、ターゲット層の旅行者に貴施設の広告メッセージが到達する可能性が高まります。

特に多忙な施設様におかれましては、少々時間を使って施策を設定することで日々の意思決定が容易になり、最終的に事業の成長につながります。

貴施設の事業目標を達成することが、マーケティング活動の目的です。それは多くの場合、収益の増加を意味しますが、リピート率のアップやお客様満足度の向上を目標とすることも考えられます。

本年、最も優先するべき事業目標のリストを即座に答えられますか ? できない場合は、少し時間を使って事業目標のリストを作りましょう。過去 12 か月の業績を振り返り、目標達成度を測る主要な指標をチェックしましょう。目標を達成するための方法の例 :

• 客室稼働率 (1 年の特定の時期、直前予約など) を向上させて収益増につなげる
  
• 平均客室単価 (ADR) を向上させる、または販売可能な客室 1 室あたりの収益 (RevPAR) を向上させて収益増につなげる
  
• コストを削減してより収益性の高い運営を行い、販売可能な客室 1 室あたりの総利益 (GOPPAR) を高める
   

貴施設に最も適した成長の方法が判明すれば、マーケティングチームはより戦略的に成果を上げる方法を考え、目標として明確に打ち出すことができます。

何種類のマーケティング目標を設定するべきでしょうか ?

具体的なマーケティング目標の設定が、事業計画につながり、その後に実施と評価が続きます。資金や人材が不足しているために達成が難しい目標を設定することがないよう注意する必要があります。目標値に届かないことにより士気を失い、成長計画そのものを損なう恐れがあるからです。目標の数が多すぎると、それぞれに十分な力を注げない可能性があります。まずは 2 ~ 3 の基本的な目標を設定することをおすすめします。

また、計測可能かつ達成可能で、施設の事業に関連性がある目標を具体的な言葉で表現することをおすすめします。期限を定めることも大切です。以下の SMART フォーマットを参考にしてください。

• Specific (具体的) : 何を達成するべきか詳しく言葉で説明しましょう 
  
• Measurable (測定できる) : 目標達成までの進捗状況と最終結果を測定する方法を決めましょう
  
• Achievable (達成できる) : 目標はある程度難しいものである必要がありますが、設定する際は予算や利用可能な人材、資材も考慮してください 
  
• Relevant (関係がある) : 目標が他の優先事項と関連しており、時期が適切であることを確認してください
  
• Time-bound (期限がある) : 集中力をもって、力を注げるよう、現実的な期限を設けましょう
   

SMART フォーマットによる、事業目標に沿ったマーケティング目標の設定例です。

事業目標

客室稼働率を高めて収益を拡大する

マーケティング目標

6 月までに、出発直前の旅行者 (予約に携帯電話を利用する傾向が強い) をターゲットとする「直前予約」プログラムを通じて直近の空室を15% 減少させる。

ターゲット層とは

広告のターゲット層は、類似した特徴をもつ消費者グループを指します。その特徴をもつ消費者グループは、他の消費者より購買につながる可能性が高いため、広告主のビジネスにとって重要です。

貴施設のターゲット層 (または「望ましいお客様」) が求めている体験は、貴施設が提供している体験と近いため、高い満足度を期すことができ、好意的な口コミを投稿していただける可能性も高まります。貴施設の事業目標 (例 : 直前予約、長期滞在、キャンセル率の軽減など) と合致するタイプの旅行を計画しているお客様もターゲット層となる可能性があります。

ターゲット層を設定する理由

特定のグループにターゲットを絞り込むことにより、貴施設がニーズを満たす理想的な滞在先であることを、具体的な例 (特定の設備 / サービス、写真、ターゲット層と同じタイプの宿泊者による口コミなど) と共に力強く訴求することができます。説得力があるメッセージにより、貴施設にとって最も望ましい旅行者の予約を獲得する可能性が高まります。

宿泊施設のターゲット層の例

世界中で膨大な数の人々が定期的に旅行しています。貴施設のターゲット層を定義する方法はいくつかありますが、以下に一般的な 3 つのグループをリストアップしました。

• ビジネス旅行者

勤務先が旅費を出すため、ビジネス旅行者は比較的、費用を気にしない傾向にありますが、利便性は重視します。貴施設が空港から近い、駐車場がある、安定した高速インターネット接続やレストラン、あるいはフィットネスセンターを提供している場合は、出張のビジネス旅行者はターゲット層に最適です。

• 家族旅行のお客様

便利な環境でリラックスしたいお子様連れの旅行者です。また子供たちが、楽しめるアクティビティが十分あることを望んでいます。ただし費用を気にする傾向が多少見られます。貴施設が駐車場または空港送迎サービスを提供されていて、人気の観光スポットやアクティビティに近く、プールまたは庭があり、無料の朝食を料金に含む場合は、家族旅行のお客様が最も好ましい旅行者グループかもしれません。

• レジャー旅行者 (大人のみ)

この旅行者グループの大半は、リラックスして休暇を楽しみたいと考えています。施設内にゴルフ場やテニスコート、スパサービスがある場合は、それをアピールしてください。施設のロケーションがビーチ、市の中心部、スキー場近く、ワイナリー、ゴルフ場、ハイキング、高級レストラン、人気観光スポットにアクセスしやすい場所のいずれかであれば、レジャー旅行者が最適なターゲット層となる可能性大です。

ターゲット層の特定

貴施設が収益管理施策を実施されている場合は、すでにターゲット層を特定されていることと思います。まだの場合は、貴施設にもっとも望ましい旅行者グループを特定する方法を見ていきましょう。

• どのようなタイプのお客様に、最もご満足いただけるでしょうか ?

マーケティングについて考える場合はお客様の立場に立ち、貴施設は、どちらのタイプのお客様のニーズやご希望を最も満たすことができるか考えてください。

• 施設の立地条件 (例 : 近くに空港がある、 ハイキングコースやアミューズメントパークがある) と、お客様の旅行の目的は一致するでしょうか。
• また施設の特徴・サービス (例 : レストラン、高速 WiFi 、駐車場) がお客様の滞在中の予定に合うかどうかも考慮していただきたいポイントです。
• 客室と客室内の設備 (例 : 高級バスアメニティとリネン、デスクと USB ポート、キッチン、コーヒーメーカなど ) についても、どのタイプのお客様にとって最も便利なものであるか考えてみましょう。
• 答えが出たら、その旅行者グループが貴施設のターゲット層と考えられるかもしれません。少なくとも貴施設が提供しているお客様体験を探している旅行者であることは確かです。お客様が好意的な口コミを投稿してくださるのは、通常、お客様体験が期待していた通り、またはそれ以上だった場合です。
   

• 宿泊者のタイプと口コミをチェック

過去 12 か月にご宿泊いただいた旅行者のタイプと口コミをチェックするのも、ターゲット層を特定するために役立つ方法です。オンライン旅行会社と提携している場合は、比較的容易にチェックできるでしょう。Expedia Group のお客様情報分析をご利用いただけば、貴施設の口コミの傾向を容易に把握することができます。

宿泊施設のバリュープロポジション (価値提案) とは

「価値提案」とは、貴施設を予約した旅行者にどのような価値を提供するか、分かりやすい言葉で約束することです。貴施設に宿泊するとお客様の望みがどのように叶えられるか明確に説明し、施設のスタッフや設備 / サービスがそれをどのように実現するかについて具体的な例を示します。理想的には、貴施設の特徴や、旅行者が比較検討する他の施設より優れている点が分かる内容で、さらに旅行者が目にするかもしれない宿泊者の口コミ (とそれに対する対応)でも同じ事が言及されれています。

貴施設の価値提案は、マーケティングメッセージの基礎をなすものでお客様へのメッセージに反映される必要があります。

約束を現実に

写真は、貴施設の価値提案をもっとも力強く旅行者に伝えます。とりわけウェブサイトやオンライン旅行会社の掲載ページ、ソーシャルメディアなどのデジタルチャネルで力を発揮します。お客様は写真を通して貴施設の特徴や素晴らしさ (眺望や、客室、プールなど) を見ることができます。何よりも重要な点は、貴施設での滞在を具体的にイメージできることです。レジャー旅行者は熱中できる体験を求める傾向が強まっているので、周辺の見どころの写真も加えて旅行者の心をかき立てましょう。

良い結果を期待していただけます。旅行者は高画質の写真を掲載している施設を閲覧する傾向があります (トリバゴの調査では、クリック数が 63% 多いという結果がでています)。またそうした施設は、他の施設より予約の確率が高く、より高い料金で予約されているということも分かっています。詳細は、宿泊施設の写真に関する弊社のクイックガイドを参照してください。

​ 貴施設の広告がターゲット層の目に触れる場所は、多くの場合、貴施設の販売活動の延長線上にあり、貴施設のマーケティングプランの一環となります実現可能なマーケティング目標を立てるためには、予算と利用可能なリソースに適したチャネルの組み合わせを探すことが重要です。

宿泊施設のマーケティングチャネルとは

宿泊施設のマーケティングチャネルとは、旅行者に貴施設の存在を知ってもらい、アピールする場所です。施設のウェブサイト、オンライン旅行会社 (OTA) の掲載ページ、オンライン広告、ソーシャルメディア、Eメール、直接的な出来事は、すべてチャネルと考えられます。

実際、チャネルの数の多さに圧倒されるほどです。しかし心配はご無用です。「80：20の法則 (パレートの法則) 」を適用すると 80% の結果は 20% のチャネルによりもたらされると考えられるからです。利用できる時間と費用には限りがあると仮定し、弊社は人気があるマーケティングチャネルを、基本、促進、拡散の 3 つのグループに分類して優先順位を付けました。

基本

宿泊施設のマーケティングにおいて基本のチャネルで、多くの場合、販売施策の中核をなします。予算をかけずに、月間で何千万人もの旅行者に広告の到達範囲を広げることができます。

貴施設のウェブサイト

貴施設が自在にメッセージの内容やトーンをコントロールすることができます。また、直接予約が可能な唯一のチャネルです。

• サイトのデザインと予約エンジンはモバイルデバイスに適している必要があります
  
• 基本的な SEO に投資を
  
• 高画質の写真を利用してください
  
• 口コミ評価を紹介 (弊社の口コミ ウィジェットをお試しください)

オンライン旅行会社の販売サイト

毎日、膨大な数の旅行者がオンライン旅行会社 (OAT) で検索・予約しています。

• 貴施設の掲載情報 / プロフィールをターゲット層に合わせて最適化しましょう
  
• 高画質の写真を数多く使用してください
  
• 常に最新の料金と空室状況を掲載してください
  
• 予想外の空室が出てしまった場合は、直前予約サイトや非公開サイトを利用した販売を試みてください

促進

ある程度の予算とリソースがある場合は、基本チャネルに加えて促進用チャネルを利用して予約を増やしましょう。

オンライン旅行会社のマーケティングプログラム
オンライン旅行会社による既存のマーケティングプログラムを活用して、魅力的な料金や特典でターゲット層にアピールしてください

• 特定の宿泊数や予約期間を対象にプロモーションを実施しましょう
  
• 予約期間の終了が近づいたら、検索結果での掲載順位を向上させるための投資をおすすめします
  
• 旅行パッケージで長期予約、キャンセル率の減少を図りましょう

観光地域づくり法人 (DMO)

DMO キャンペーンに参加して、地域の観光産業を活性化させましょう。

• DMO による発行物 / ウェブサイト / Eメールキャンペーンを利用して、リサーチ段階の旅行者にターゲットを絞って広告活動を実施しましょう
• DMO の広告経由で予約した旅行者には、無料の駐車場や朝食などの特典を提供し予約増を図りましょう

ソーシャルメディア マーケティング

Instagram など、旅行者が旅行先に関する情報を収集するためにアクセスするソーシャルメディアのサイトに、コンテンツを投稿しましょう。

• 「インスタ映え」するシーンを貴施設に作ってください
• 地名など旅行関連のハッシュタグの使用をおすすめします
• ユーザーが貴施設をタグ付けした場合は、無料ドリンクなどの特典を提供してください

拡散

このタイプのチャネルを利用するには予算がかかります。また専門知識と、多くの場合、豊富なリソースも必要となるでしょう。このチャネルは、上述の基本および促進チャネルと組み合わせて利用してください。

広報 (PR)

旅行専門メディアや地域 / 地方に特化したメディアを通じて消費者の認知度を高めましょう

• ニュース性のある話題を作って地元の新聞・雑誌の注目を集めましょう
  
• 地域 / 地方の注目を集めたら PR 会社と契約して、より広範囲に知名度を広げましょう

Eメールマーケティング

宿泊されたことがあるお客様や、頻繁にご予約いただくお客様に、定期的にEメールを送信しましょう

• ご宿泊後のお客様が貴施設のことを忘れないよう、週または月に 1 回、定期的にニュースレターを送信することをおすすめします
• プロモーションや、宿泊特典などを利用してリピート率の向上を図りましょう
• EU 一般データ保護規則や CAN-SPAM 法など、個人情報保護に関する法律に従ってください

デジタル広告

有料のデジタル広告キャンペーンを活用して貴施設のサイトにトラフィックを誘導しましょう

• Google、Bing などにテスト広告を掲載して費用対効果 (ROI) をチェックすることをおすすめします
• TravelAds を利用して Expedia Group の販売サイト利用者を対象とする広告活動を試してださい
• 無料 / 割引料金の駐車場などの特典を提供して、予約を増やしましょう

コンテンツマーケティング / SEO

キーワードで最適化したコンテンツを増やして、自然検索による無料のトラフィックを増やしましょう。キーワードは、旅行者が宿泊施設を検索する際に検索エンジンにより検出されます

• 効果を得るために、ターゲットキーワードによる検索結果で 1 ページ目に掲載されることを目指してください
• 検索エンジン最適化 (SEO) は強力なチャネルですが、効果が出るまでには時間がかかります

​ 貴施設のビジネスの成長を助長するための、マーケティング施策作成の基礎を習得されました。早速、始めましょう。

必要なものは、測定可能なマーケティング目標、ターゲットとする旅行者層の特定と魅力的な価値の提案です。次のステップでは、既存のマーケティング活動と新たに作成する施策の調整を考えましょう。基本チャネルを集中的に利用する場合も、貴施設の公式サイトやオンライン旅行会社の掲載ページのコピー、詳細情報、写真を更新することは有益です。すべての新規の活動は、貴施設の事業目標と方向性が一致している必要があります。無駄を省いて、大切な時間をお客様サービスのために利用してください。