貴施設に適した販売施策を立案

宿泊施設の販売施策とは、さまざまなチャネルを通じて利益が出るように客室を販売するための対策を指します。通常、直接販売するチャネル (施設の公式サイトなど) と他社を介して販売するチャネル (オンライン旅行会社、GDS、ホールセラーなど) を組み合わせて、販売が行われています。目標は、旅行者への露出度を高めて稼働率を上げるとともに、適切な旅行者層に訴求して好意的な口コミを獲得し、販売可能な客室 1 室あたりの総営業利益 (GOPPAR : Gross operating profit per available room) を最大化して高い財務健全性を確保することです。

難しく感じるかもしれませんが、適切な数の販売チャネルを選択し組み合わせることで、競争力を高め、収益の拡大へとつなげることができます。詳細をご覧のうえ、貴施設の販売施策の策定にお役立てください。

デジタル技術の革新によりタブレットやスマートフォンで旅行情報を確認し、予約できるようになったことで、宿泊施設は世界中の旅行者への販売が可能になりました。直接予約が可能な公式サイトから、他社を介した下記の販売チャネルまで、宿泊施設はいつでもどこでも旅行者とのつながりを構築することができます。

なお、旅行者が予約に至るまでのプロセスは直線ではありません。エクスペディアの最近の調査により、旅行者は予約の前に平均 43 回検索を行うことが明らかになりました。このため、施策を策定するとともに、直接販売・間接販売を含む、さまざまな販売チャネルで客室を提供することが重要です。

貴施設のウェブサイト

多くの場合、宿泊プランの主な販売チャネルはその施設の公式サイトまたは親会社の公式サイトとなります。公式サイトは施設の特徴や魅力を伝えるのに絶好の場所であるほか、旅行者に直接販売することができる唯一のオンライン販売チャネルでもあります。

このチャネルのパフォーマンスを最大限に高めるには、現在、スマートフォンやタブレットからのトラフィックが全ウェブトラフィックの 50% 以上を占めていることを意識しておく必要があります。読み込みが速く、モバイルでの利用が簡単で、安全かつスムーズに予約できるサイトを構築しましょう。

また、Google や Bing などの検索エンジンにおいて、貴施設のサイトが検索結果の上位に表示されることも重要です。平均的に、ウェブサイトへの流入の 51% はオーガニック (有料広告以外) で、ユーザーが検索結果で表示された上位のサイトをクリックすることにより発生します。検索結果でサイトの掲載順位を高めるための対策は SEO (Search Engine Optimization : 検索エンジン最適化) と呼ばれ、最も効果が期待できる対策です。また、旅行者を呼び込み、ウェブサイトで魅力をアピールするために、オンライン広告にマーケティング費用を投入することもできます。

オンライン旅行会社 (OTA)

オンライン旅行会社 (OTA) は旅行者と旅行商品を提供する会社をつなぐデジタルプラットフォームで、航空券、宿泊施設、レンタカー、現地ツアー、クルーズなどの予約が可能です。毎日、世界中の何百万人もの旅行者が、オンライン旅行会社を通じてビジネスやレジャー目的の旅行を予約しています。

販売チャネルとして、オンライン旅行会社は旅行商品を積極的に検索している多くの旅行者に訴求し、特定の旅行者層を呼び込む機会を提供するとともに、予約の獲得をサポートするパフォーマンス管理機能、マーケット情報、プログラムも用意しています。さらに、オンライン旅行会社ではパッケージとして販売することも可能です。パッケージの予約には、航空券と宿泊の組み合わせやレンタカーと宿泊の組み合わせが含まれます。

施設の掲載は無料です。オンライン旅行会社は予約が成立するごとに施設に手数料を請求します。通常、客室収益のうち一定の割合が手数料として請求されますが、手数料はオンライン旅行会社によって異なります。予約完了後はオンライン旅行会社が予約の変更やキャンセルに関する主な連絡先となるため、貴施設は滞在中のお客様へのサービスに集中することができます。

「オンライン旅行会社 (OTA) を活用するメリット」で詳細をご覧ください。

Global Distribution System (GDS)

GDS は旅行会社が主に使用する総合予約システムで、航空券、宿泊施設、レンタカーをリアルタイムで予約することができます。GDS の中では、Amadeus、Galileo、Sabre、Worldspan がよく知られています。

販売チャネルとして、GDS は複数の旅行会社のシステムに接続し、1 か所ですべてのネットワーク上の掲載情報を更新することを可能にします。また、貴施設の在庫を世界中に販売し、直前の空室を埋める手助けをします。

一般的に、GDS の利用には 1 回限りの設定料のほか、予約が成立するごとに定率または定額の手数料がかかります。費用は GDS によって異なります。

ホールセラー

ホールセラーとは、割引価格で客室を一括で仕入れ、価格を上げて旅行会社 (オンライン旅行会社を含む) に販売する会社を指します。通常、大規模の独立系施設やホテルチェーンが、稼働率を最大化し、一定の稼働率を確保するためにホールセラーを利用します。ホールセラーを利用することで、他の方法では販売が難しい海外の旅行者への販売が可能になります。ただし、ホールセラーが旅行者と直接やり取りを行うことはありません。

最初に施設・ホールセラー間、次にホールセラー・旅行会社 (オンライン旅行会社を含む) 間と、複数回値上げが行われるため、価格差の発生や、施設の収益性の低下につながる可能性があります。その他の懸念点として、オンラインでの販売場所を管理できないことや、予約などにおいて旅行者に一貫したサービスを提供できないことが挙げられます。

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ツアーオペレーター

最初から最後まで旅行者に一貫したサービスを提供することに注力するツアーオペレーターは、通常それぞれの旅行商品 (航空券、送迎、宿泊施設、食事、ガイド、アクティビティなど) を割引価格で仕入れ、組み合わせてパッケージとして直接旅行者に販売するか、オンライン旅行会社やホールセラーを通して販売します。

多くの場合、ツアーオペレーターは特定の目的地 (例 : メキシコなど) やアクティビティ (例 : ゴルフ、スキー、ダイビング) に特化しています。施設の所在地や設備・サービスが、ツアーオペレーターが専門的に扱う地域、サービス、顧客層と一致している場合、割引価格での在庫の販売が利益をもたらす可能性があります。

観光地域づくり法人 (DMO)

通常 DMO は政府機関を指し、観光局やビジターズビューローが含まれます。特定の地域への旅行・観光および特定の地域内の旅行・観光を推進する役割を担います。観光を通じて地域の経済活動を活性化し、経済的地位を強化することを目的として、マーケティング施策を策定・実施します。

宿泊施設の多くは、現地の DMO のウェブサイトに自動的に掲載されています。通常、DMO との提携により、施設の掲載ページの露出を高めることができます。

オフライン

オフラインの販売チャネルも見過ごせません。貴施設のウェブサイトからの予約と同様に、電話やEメールなどのオフラインチャネルにより、お客様への一貫したサービスを一定の水準に維持し、利益を最大化することができます。オフラインでの高い販売実績を誇る施設の場合は特に、オフラインチャネルを管理し、問い合わせに素早く対応することが重要です。

チャネルマネージャーは、宿泊施設とオンライン販売チャネル (オンライン旅行会社、GDS、ホールセラーなど) をつなぐシステムです。このシステムにより、1 か所で簡単にすべてを管理することができます。

チャネルマネージャーを利用すると、多くの場合、料金、在庫、予約の情報がほぼリアルタイムで自動的に更新されます。このため、情報を 1 度更新するだけで、接続されているすべてのチャネルに情報が転送されます。時間を節約できるほか、情報の正確性を高め、オーバーブッキングやレートパリティ (価格整合性) などの問題を減少させることができます。また、貴施設がこれまでに利用を検討していなかったオンラインチャネルとつなぎ、販売網の拡大をサポートします。さらに、チャネルマネージャーを利用することで、お客様への満足度の高いサービスの提供に注力する時間を増やすことができます。

チャネルマネージャーの詳細については、チャネルマネージャーの選び方に関するガイドをご覧ください。

どの施設でも利用できる最適な販売施策はありません。さまざまな販売チャネルを含め、貴施設の事業目標、財務状況、ターゲット層を反映した最適な施策を策定する必要があります。販売チャネルの組み合わせをご検討の際には、以下の重要事項をご確認ください。

1. 明確な事業目標を持つ

新しい販売チャネルをご検討の前に、現在のパフォーマンスを把握し、達成したい目標を確認しましょう。これにより、販売チャネルの適切な組み合わせが特定できるだけでなく、貴施設の成功を測定することが可能になります。

目標の例 :

• 海外からの旅行者数の増加 (海外からの旅行者は通常早期に予約し、滞在期間が長い傾向があります)
• オフシーズンに稼働率を高め収益を拡大
• 1 つの販売チャネルへの依存を減少
• 直前の空室販売数を増加

2. 最適な旅行者をターゲットにする

貴施設の収益性にプラスの影響を与え、貴施設が提供する設備・サービスを必要としてる旅行者層を把握することで、どの販売チャネルを選択し、優先的に利用するか判断しやすくなります。貴施設の求める旅行者が、贅沢な夏休みを過ごしたい海外からの旅行者でも、予算を重視する直前予約の旅行者でも、ターゲット層が好む予約チャネルに注力する必要があります。実際に、貴施設の主な宿泊者が国内からの旅行者なのか海外からの旅行者なのかを把握するだけでも、ターゲットの絞り込みに役立ちます。オンライン旅行会社が提供するマーケットレポートを活用することで、高収益が見込める地域や旅行者層を特定し、訴求することができます。

3. 収益性を把握する

販売可能な客室 1 室あたりの総営業利益 (GOPPAR : Gross operating profit per available room) は、販売による収益性を評価するうえで役立つ主要なパフォーマンス指標です。販売可能な客室 1 室あたりの収益 (RevPAR : Revenue per available room) は、収益を生み出すために在庫と料金をどの程度上手く管理することができたかを把握するのに役立ちますが、この指標とは異なり、GOPPAR では実際の収益性を算出するために収益と経費が考慮されます。

ウェブサイトの構築、ロイヤルティプログラム、ダイレクトマーケティングなどの経費が発生する直接予約を含め、すべての販売チャネルにおいて GOPPAR を比較することで、販売チャネルの組み合わせによる収益性をより深く理解し、最大化することが可能になります。

GOPPAR を算出するには、総収益から総支出を差し引き、販売可能な客室数で割ります。

GOPPAR = (総収益 - 総支出) ÷ 販売可能な客室数

施設分析の主な指標について詳細をご覧のうえ、貴施設のパフォーマンスの把握にお役立てください。

4. 競争力の高い料金を維持する

適切な販売チャネルの組み合わせを見つけることに加え、競争力の高い料金を設定することも重要な販売施策の 1 つです。マーケットの状況や競合施設の料金をリアルタイムで確認することにより、貴施設の料金を最適化することができます。

オンライン旅行会社とチャネルマネージャーは、変化するマーケット状況の把握に役立つ機能を提供しています。Expedia Group が提供する Rev+ は無料の収益管理機能で、独自に集約されたリアルタイムのマーケットデータ、稼働率の予測、競争力の高い料金などのデータをご確認いただけます。

5. 継続的に調整を続ける

技術革新のスピードや急速に変化する旅行者動向を踏まえ、販売チャネルでのパフォーマンスを継続的に確認し、最適化することが重要です。販売チャネルの経費と収益の分析を続け、季節や曜日ごと、またはマーケットの状況に応じてパフォーマンスを確認しましょう。在庫の割り当てを調整し、最適な販売チャネルの組み合わせを維持することで、収益の拡大を促進することができます。