今日の旅行者に見合う復興計画を立てるには

安全・衛生対策の強化から、柔軟な予約ポリシーまで、今日の観光客が求めているものを理解することで、貴施設の再開施策を準備および調整するのに役立ちます。

「ニューノーマル」、それは今後数か月で何度も耳にするであろうフレーズです。そのポイントとなるのが次のような質問です。世界中で日常が取り戻されつつあるなか、旅行業界は今後どのようになり、復興計画をどのように変化させていけばよいのでしょうか。

当社ではその答えを見つけるためのサポートを提供します。不動産サービスの世界的リーダーである CBRE は、過去の前例と 2020 年における旅行業界の予測について取り上げた『Expectations for the Year Ahead』というレポートを発行しています。

Expedia Group でかつて宿泊施設オーナー窓口担当バイスプレジデントを務め、現在は Ground Transport のバイスプレジデントを務めるスーザン スピニーは、レポートを詳細に分析し、宿泊施設にとって非常に重要なトレンドを明らかにしました。

旅行需要の回復に備える

生まれてまもない赤ちゃん、孫、友人、親戚など、コロナ禍の中、会うことができなかった人たちがいます。コロナ後初めての旅行のきっかけとなるのが、人とつながりたいという願望です。

「多くの人にとって、コロナ後初となる旅行の目的は場所そのものではなく、人とのふれあいです」と スピニーは述べています。

最初に戻ってくるのが観光客なら、課題とチャンスの両方がもたらされます。

これまで出張に力を入れてきた企業は観光市場にいち早く参入するため、競合がさらにひしめくことになります。

そこで問題になるのが、どのように差別化を図るかという点です。

まずは今後の旅行者の考えを理解する必要があります。

旅行予定のお客様が懸念していることを理解する

今後は 3 つの重要なトレンドがホテル関係者や宿泊施設のオーナーに影響を与えるとスピニーは考えています。

  1. 重要なのは柔軟性: 特定の季節に観光客が押し寄せる観光地では、旅行のパターンが大きく変化し、需要もこれまでとは様変わりします。さらに、旅行者は予約に関して安全性と柔軟性を強く求めるようになります。人々は金銭面で不安を抱えるようになり、旅行に行っても大丈夫かどうかの判断が難しくなるため、キャンセルした場合に支払い額が確実に戻ってくることを望むようになります。
  2. 安全・衛生に力を入れる :滞在する場所での清潔さが優先されており、自分たちの健康が守られているという確信を得たいと家族連れのお客様は考えます。
  3. 人とのつながりを促進 : コロナ後最初の旅行者たちの目的は、観光地に行くことだけではありません。大切な人のもとを訪ねたり、お気に入りの場所に再び訪問したり、コロナ禍の間会うことのできなかった人たちに会いに行ったりするのも旅行の目的の 1 つになります。今後業績を伸ばしていくと思われるのは、独自の方法で人とのつながりを促進できる宿泊施設です。

こうしたトレンドを理解し、それに合わせて施策を変えることで、競合施設との差別化を図ることができる施設だけが、この新たな世界で成功をつかむことができるのです。

競合施設との差別化のためにできること

旅行に行きたいという人々の気持ちは世界共通のものです。政府による制限が緩和されてから数週間後には旅行者が大挙してくることになります。この機会にできるだけ多くの予約を獲得したいと考えている宿泊施設にとって必要なのは、施策に柔軟性を持たせることです。

柔軟な対応でお客様をサポート

人々が金銭面で不安を感じると旅行業界が苦しむことになるのは歴史が物語っています。

9/11 の同時多発テロ事件の後、飛行機に乗ることに人々は数か月間恐怖を感じていたことが CBRE の調査で明らかになっています。2008 年のリーマンショックの際には、キャッシュフローと財産の先行きが不透明になったことで旅行業界に甚大な影響が及びました。

新型コロナウイルスでは状況がさらに複雑になっています。スピニーは次のように述べています :「金銭面と先行きの不透明さに関しては過去の事例と同じ問題が旅行者の間にあります。しかし現在の状況では、感染や検疫に対する恐怖、どこかで足止めを食らったり、直前になって旅行の計画に影響するようなことが起きる不安があるため、状況は今までよりさらに複雑です。」

今後ビジネスを成長させていくために、旅行者が安心して予約できる、柔軟性を優先した復興計画を策定しましょう。

「誰もがごく短期間で新たな状況に合わせて変化し、順応する必要があります」とスピニーは述べています。主に次の 4 つについて対応が必要です。

  1. ポリシー : キャンセルポリシーを緩和するとともに、早期予約や事前予約の特典を設けることで予約数を増やしましょう。
  2. マーケットの状況 : 自分たちがいるマーケットについて熟知し、参入できる余地を把握しましょう。自分たちのマーケットにおいて魅力的な料金プランを探る : 9/11 の同時多発テロ発生時の市況と現在の市況を比較して、価格戦略を徹底的に考えることの重要性も、スピニーは指摘しています。たとえば、予約数を増やすために料金を引き下げたにもかかわらず、レストランのハンバーガーの値段が 42 ドルだと収益増加は見込めません。組織全体で価格 (客室料金、食事、アップセルなど) に統一感を持たせることで、予約したお客様がサービスをフル活用できるようにしましょう。
  3. 在庫: 多くの旅行者が旅行に関しては様子見の姿勢になっています。その他の旅行者はかなり先の予約を考えており、在庫が少ないことで消極的になっています。宿泊直前でも予約できるようにし、インダイレクト チャネルにおける 2021 年前半の在庫を増やすことでチャンスを最大限に活かせるようにしましょう。
  4. 旅行者の行動: 旅行が再開されるようになっても、旅行者の行動はこれまでとは違ったものになっている可能性があります。たとえば、飛行機よりも自動車を利用する旅行者が増えるかもしれません。貴施設の駐車場の状況はどのようになっていますか ? 自動車で訪れるお客様が増えてもそれに対応し、非接触サービスを提供できるでしょうか。

ルームサービスからレストランまで、あらゆるサービスに考えを巡らせ、お客様の利便性を上げるにはどうすればよいかを考えましょう。こうすることで競合の一歩先を行くことができます。

ブランド施策の詳細については、「新型コロナウイルスに合わせた宿泊施設ブランド施策の見直し」をご覧ください。

安全・衛生に関しては情報提供が重要

今の世界で特に重要になるのが安全衛生に関する規定です。予防措置として導入し、こうした取り組みをいかにスタッフに伝えるかが重要になります。

スピニーは次のように述べています :「今最も重要とされているのは、感染から身を守ることです。子供と施設に訪れた際に知りたいのは、病気にかかるリスクがないことです。」以下に推奨する対策例をいくつかご紹介します。

  1. 独自の対策で競合施設と差をつけましょう。旅行者に安心していただける追加の対策を実施することで、差別化を図ることができます。旅行者に清潔さを伝える清掃済みシールを客室の清掃後にドアに貼るのも1つの案です。他の宿泊施設では行っていない、旅行者に安心していただける対策を考えてみましょう。追加の対策を実施することで、他の宿泊施設と差別化を図ることができます。
  2. 予防措置をお客様にお伝えしましょう。宿泊施設の安全・衛生対策は重要ですが、予防措置に関連するコミュニケーション対策も同じくらい重要です。多くの旅行者は宿泊施設への滞在、レンタカーや航空券の予約をしばらく行っていません。そこで重要になるのが、予約の前後にすべてのチャネルで継続的に安心感を伝えることです。ウェブサイト、OTA メッセージング機能、メール、電話などのチャネルを使って、実施中の予防措置をアピールし、予約を検討されている旅行者に興味を持っていただきましょう。すべてのチャネルで情報の一貫性をダブルチェックしてください。一貫性が取れていないと混乱を招き、旅行者に予約していただけない場合があります。そして、旅行者の予約直後、リマインダーメール、さらにチェックイン時にもメッセージを送信しましょう。手厚いコミュニケーションによって、旅行者に安心していただけます。
  3. 客室以外にも配慮が必要です。セルフチェックインや共用スペース、ビューポイントなどにも力を入れることで、他の宿泊施設と差別化を図ることができます。これらのエリアが旅行者にとって安全なものとなるように、ホテルの清掃手順を特別に策定しておきましょう。

安全衛生に関する詳細は、「旅行者に安心していただくための 3 つの安全・衛生対策」をお読みください。

お客様とのつながりを強化

この数か月は誰にとっても厳しい時期でしたが、その時期がピークシーズンと重なった観光地は最も大きな打撃を受けました。

人々は 3 月から 5 月のピークシーズンに旅行に行くことができなかったため、今年の後半に旅行の予定を延期しています。今こそ、旅行者とのつながりを構築し、失った収益の一部を取り戻す時です。特に重要となる取り組みは以下のとおりです。

  • 過去に施設を利用したことがあるお客様にアプローチする : ニューノーマル時代を迎え、季節的なトレンドはその姿を一変させます。スピニーは次のように述べています。「今年の夏に宿泊するお客様がいない場合は、夏のピークシーズンに収益を取り戻すことは難しいでしょう。しかし、春か夏の恒例の旅行に行けなかった人々が秋に旅行に行くことで、新たなピークシーズンが生まれる可能性があります。」

「特定の土地に対してある種の愛着を感じているという声を多くの人から耳にしました。春休みには毎年そこを訪れていたのに、今年の春は行けなかったのです。素晴らしい思い出がある場所に戻り、同じ場所で新たな思い出を作るために恩返しがしたいと人々は考えています。」過去に施設を利用したことがある旅行者に連絡を取り、1 年中いつでも素晴らしい思い出が作れることをアピールしましょう。

  • コミュニティを構築するための創造的な手法を確立する : 「年齢制限を緩和し、料金を安くすることで、若い世代のレンタカー利用者でも簡単に家に帰れるようにしているレンタカー企業があります。ニューヨークでは、医療従事者にレンタカーを無償提供しているレンタカー企業もあります。」とスピニーは述べています。別の例として、Expedia Group ではシンガポールの医療従事者向けのホテル宿泊プログラムを導入しています。これはシンガポール医療従事者サポートプランと呼ばれており、医療従事者は割引価格で自主隔離、休憩、静養を行うことができます。

自分の周りの人同士のつながりやコミュニティを促進するにはどうすればよいのでしょうか ?

  • 他の施設との差別化に全力で取り組む : この機会に、貴施設の掲載情報やサービスについて見直してみませんか。写真や口コミ、設備・サービスなど、すべてのマーケティング資材を見直しましょう。旅行者の皆様にとって思い出に残る滞在にするために、どのようなサポートができるでしょうか。今こそ、人とのつながりに全力を注ぐ時です。

旅行業界が復活の兆しを見せています。ぜひ当社にそのお手伝いをさせてください。

世界の混乱にもかかわらず、変わることのないものがあります。それは、私たち全員がつながりを求めているということです。

愛しい人、場所、体験へのつながりを。

時間を設けて、ポリシー、料金、ウェブサイト、OTA の掲載情報など、今日における旅行者のニーズに応えるコミュニティの雰囲気を醸成しましょう。そうすれば、世界が動き出したときには、すでに貴施設の準備は整っているはずです。

ホテル向けの新型コロナウイルス (COVID-19) に関するアドバイスの詳細については、「人々は再び旅行をし始めます。準備は万全ですか ?」をお読みください。